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クロスオーバー:「他人の空似」

※ 『封神演義』がやってきた! 哎呀呀(アイヤーヤー)!の続編です。



 なぜ彼を拾ったのかといえば、ちょっとした気まぐれと親切心から、ということになるだろう。

 夏の暑さが和らぎ、秋の気配が漂い始めたある日のことだった。図書館で借りた本を返しに行こうとしていた時、不意に背後から

「ねえ、そこの君」

 と呼び止められた。

 父さんにそっくりな声だった。でも、こんな昼日中に父さんが外を出歩くだろうか? そもそも僕を「そこの君」なんて呼ぶだろうか? 訝りながら後ろを振り向いた。

 声の主は父さんではなかった。髪の色と無駄にけばけばしい雰囲気が父さんに似ていると言えなくもないが、父さんよりずっと華奢な体つきの男。舞台化粧のような派手な顔には、どうしていいか分からないという表情が浮かんでいる。

「ここはどこだい? 金鰲島に戻りたいんだが……」

 金鰲島? そんな地名がこの辺りにあるなんて聞いたことがない。

「さあ……地図、見ます? 現在地がここですけど、この地図のどっちの方向から来たか分かりますか?」

 スマートフォンの地図を彼に見せた。彼はしげしげと画面を見た後、首を横に振った。

「全く分からない。というより、僕はひょっとしたら違う世界に来てしまったのかもしれない」


 僕たちが暮らす世界に並行して、パラレルワールドがいくつも存在し、それぞれの世界に異なった歴史がある。そもそも僕たちが今いる世界も、「元の世界」で生きていた人間たちが、生まれた時代も国も飛び越えて一箇所に集まって暮らしている世界だ。神父さんやヴァレンタイン大統領に常々そう聞かされてきた。

 だからパラレルワールドから来た人間が僕の前に現れても不思議はない。多分彼の頭がおかしいわけではないだろう。

 立ち話も何なので、空腹だと言っていた彼にスパゲッティと飲み物をおごり、話を聞いた。

「パラレルワールドか。僕もそういうものがあるかもしれないと薄々感づいてはいたけれど、まさかこの僕がそこへ飛ばされるとはね」

 スパゲッティを口に運びながら彼は言った。

 趙公明、というのが彼の名前らしい。そんな東洋的な名前だとは思ってもみなかったので、二度ほど聞き返してしまった。

 金鰲島というところで修行をし、弟子を取って暮らしている仙人で、若く見えるが年は千歳以上だという。歩き慣れているはずの金鰲島の中でなぜか道を間違え、いつの間にかここに来ていたらしい。

 腰に差している乗馬用の鞭のような形の武器と、ポケットに入っている見たこともない貨幣が少し。それが今の彼の全財産だった。

「参ったな。このままだと食事もできないし、寝るところもない……ひとまず君がごちそうしてくれて助かったよ」

「仙人って、霞を食べているわけではないんですね」

「食事はするよ。美食こそ人生の楽しみじゃないか」

 しゃべるとやっぱり父さんに似ている、と思ったからかどうか分からない。しかし、ふと気づくと僕はこう言っていた。

「趙公明さん、うちに来ます? 寝るところ、ないんでしょう? 僕はジョルノ・ジョバァーナ。ギャング組織『パッショーネ』のボスです」

 彼は怖いくらい満面の笑顔になり、

「ありがとう。それなら君のところでやっかいになるよ、ジョルノ君」

 と答えた。


 こうして、彼――趙公明さんは僕の家にやってきた。

 何日か経つと、彼の人となりがだんだん分かってきた。仙人だから物静かな人なのかと思ったらとんでもない。父さんと同じか、それに輪をかけて傍若無人で困った人だった。

 家にあった貰い物のブランデーに勝手に手を付けたのはまだいい。そもそも僕が飲まないので持て余していたものだったのだから。

 だが、何か生活に必要なものを買ってくるといいと思って現金を渡したら、彼はそのお金で目がチカチカするような花柄のカーテンを買ってきて家中にかけてしまった。窓という窓がどぎつい花柄で埋め尽くされた家を見て、僕はめまいを起こしかけた。

「何でこんなに無駄遣いしたんですか? 他に買わないといけないものはいくらでもあるでしょう。それにここはギャングのボスの家なんだから、むやみに目立って暗殺の標的にでもなったら困るんです。勝手なことはしないで下さい」

 僕が叱りつけると、彼はしぶしぶカーテンを元に戻すことに同意した。

 なのにその翌日、彼は何と性懲りもなく十万円もするアンティークのベッドを取り寄せる契約を家具店でしてきてしまったのだった。

「ロココ調のベッドさ。ヘッドボードの形と猫足が実に美しくて、良く眠れそうなのだよ」

 気の触れたヒマワリの花のような能天気な顔でそう言ってのけた彼を見て、僕はカッと来た。彼がスタンド使いでないことも忘れて、彼をゴールド・エクスペリエンスの拳で殴り飛ばしてしまった。スタンドが見えない彼が、拳を避けることもできずもんどり打って倒れたのを見て、僕は自分のしてしまったことを少しだけ後悔した。他人を暴力で屈服させ、支配する……まるで僕の義父がしたことと同じじゃあないか。しかし、言うべきことははっきり言っておかなくてはいけない。

「何なんだ、今のは……」

 感覚が暴走し、面食らっている彼に、僕は心を鬼にして告げた。

「僕たちの能力、スタンドのビジョンは、スタンド使いにしか見えません。ただ殴りつけるだけでなく、物体に生命を与え、生きている人間の感覚を暴走させることができるのが僕の能力です。この次に僕に無断で好き勝手な行動を取ったら、こんなものじゃあすみませんからね。この家からも出ていってもらいます。寝るところならソファーベッドがあるんだからそこで寝て下さい。床で寝るよりましでしょう」

 目に見えない攻撃がショックだったのか、感覚の暴走がこたえたのか、それ以来彼はいくらかおとなしくなった。

 一方、彼の意見を受け入れたこともある。

「どうもこの家は色気がなさすぎるんだよね。花瓶に花くらい活けたっていいじゃないか」

 と彼は主張した。

 家に花を飾るなんて無駄もいいところだと思っていたが、カーテンを花柄にされたり、余計な家具を買われたりするよりはましだ。適当な花瓶を買いに行き、僕の能力で作ったカサブランカやバラをそこに活けた。僕がその辺にあったクリップやホッチキスの芯から花を作るのを見て、彼は目を丸くした。

 最初はそうやって僕が作った花を活けていたが、ハサミで茎の長さを詰めようとした趙公明さんにダメージが反射して、彼の足首がざっくりと切れるという事故があってから、花屋で普通の花を買ってくることにした。

「君の作った生き物を攻撃するとダメージが跳ね返ってくるなんて聞いてないぞ。ひどいじゃないか」

 足の治療をしている僕に、趙公明さんはブツブツと文句を言った。

「すみません。言うのをすっかり忘れていました」

「ひどいやつだ。君は本当にひどいやつだ」

 僕が家に連れてこなかったら野垂れ死にしていたかもしれないのに「ひどいやつ」もないものだと思ったが、今回ばかりは説明を怠った僕の責任なので、何も言えなかった。

 

 ロイヤルミルクティーが趙公明さんの好物であることが分かった。最初は茶葉から淹れたのではなく粉末のものを出すと不平を言っていたが、いちいち淹れるのも大変なので慣れてもらうことにした。だいぶ前に父さんが半ば無理やり僕にくれたヴィクトリア様式の椅子とテーブルを気に入り、そこでお茶を飲むのが彼の日課になった。

 食べ物については、初めの頃は

「もっとこう、フォアグラとかトリュフとかはないのかい?」

 などと寝ぼけたことを言っていたが、

「それが住まわせてもらっている人の態度ですか。普通の食事しか出せませんよ」

 と言って取り合わなかったら、次第に何でも食べるようになった。少食だが、食べられない物はあまりないようだ。

 しかし、初めて彼を父さんに引き合わせた時、どうも彼のことが気に食わなかったらしい父さんが出したうなぎのゼリー寄せは食べる気がしなかったらしい。

 その後も父さんは趙公明さんと顔を合わせるたびに

「まだいるのか」

 と苦々しげに言った。

「君の父上は僕のことが嫌いなんだろうか?」

 ある時趙公明さんは僕に尋ねた。

「同族嫌悪じゃあないですか? 父さんもあなたみたいに派手好きで傍迷惑な人ですから」

 実際、父さんのように凶暴でないことを除けば、彼はやはり父さんに似ている、と僕は感じていた。

 そう思うのは僕だけではないようだった。組織の仲間たちに趙公明さんを会わせた翌日、ミスタにこう聞かれた。

「ジョルノ、あの人、もしかしてお前の兄さんじゃあないのか?」

 やはりそう思われたのか。父さんの日頃の行いのせいもあるだろうが。

「いいえ。血縁の感覚も星型のアザもないし、赤の他人ですよ」

「そうなのか? でも何かお前の親父さんに似てないか? 声もそっくりだし」

「そこは確かに僕も気になっていました。でもごめんですよ、あんな兄さん」

 しかし、それ以来、みんな趙公明さんを「ジョルノの兄さん」と呼ぶようになってしまった。

 僕の「兄さん」がうちにいると聞いた弟たちが泡を食ってやってきた。趙公明さんと会ってみて血縁の感覚がないのを確かめると

「なーんだ、親父の隠し子がまだいるのかと思ったじゃあねーか」

「俺なんて『ジョルノに兄さんがいる』って聞いて、目が開かなくなって倒れそうになったんだからな」

「しかし兄ちゃんも兄ちゃんだぜ、わざわざ変なやつを拾ってくるところまで親父に似なくたっていいのに」

 と、口々に勝手なことを言って帰っていった。

「そうか、君には三人の弟君がいるのか」

「そうです。と言っても、全員母親が違うので、最近まで会ったことがありませんでしたが」

「そうなのか。ハハハ、父上も隅に置けないな」

 ちっとも笑い事ではない。

「それはさておき、ジョルノ君も兄弟は大切にしたまえ。実は僕にも妹が三人いるんだが、今どこで何をしているだろうか……僕を心配してくれているだろうか?」

「いるんですか、妹さん」

「いるとも。強くて心優しい、僕の自慢の妹たちさ」

 そう言うと、趙公明さんは少し目をうるませた。

「しかし、『ジョルノの兄さん』か。ここに来て弟が一人増えるというのも悪くはないな」

「僕はあなたの弟になるつもりはありませんよ」

 聞いているのかいないのか、趙公明さんは鼻歌交じりに棚からブランデーのボトルを取り出した。今夜も寝る前に一杯やるつもりらしい。


「ジョルノー、兄さんいる? ちょっと聞きたいことがあるんだ」

 ナランチャが訪ねてきた。

 趙公明さんは漢字の読み書きができるので、ナランチャは彼に漢字を教わりに来るようになっていた。

「漢字というのはどうも角ばっていて、エレガントさが足りないと思うのだけどね……ほら、これが漢字の『四』だ」

「これが『四』!? 『一』から『三』まではそのまんまだけど、こんなの覚えられるかなぁ? ギアッチョだったらすごい勢いでキレてるぜ? あ、ギアッチョっていうのは、うちの組織にいる、こういうことにすぐキレるやつで……」

「ハハハ、これくらいでつまずいていたら『華麗』なんてとても書けないぞ?」

「よし、やるぞ!」

 こんなふうに、よく二人でああでもないこうでもないとやっている。そういえばナランチャが組織に入った経緯と、趙公明さんがうちに来た経緯は似ていた。

 ナランチャが日本の漫画を持ち込んで、そこに出てくる漢字について聞くこともある。彼が「呪」という漢字を指差して

「この字、四角がいっぱいあってかっこいいなぁ。刺青で彫れねーかな?」

 と言い出したとき、趙公明さんがいつになく真剣に

「やめたまえ」

 と言ったのには少し驚いた。

 ポルナレフさんも趙公明さんに会った。趙公明さんがたまに口にするフランス語の発音の間違いについてチクチク文句を言った後、陰で僕に

「何だあの似非貴族野郎!」

 と毒づいて帰っていったので、好感触とは到底言い難いようだったが。

 趙公明さんは、僕がパッショーネのボスの座に着くまでの話を聞くのが好きだ。プロシュートとペッシの二人と戦った話をした時は、何度か拍手をして「トレビアーン」と言ったほどだ。またある時は、チョコラータの話をしたら大声で笑い出した。どうしたのかと思ったら、元の世界にいるチョコラータによく似た人物を思い出したらしい。

 最近不穏な動きをしている別の組織の話もしたら、

「そんなもの、一気に潰してしまえばいいじゃないか。うんと華やかにね」

 と言い出したので、そんな簡単な話ではないと言っておいた。


 どうやら僕が趙公明さんと出会ったのと同じような現象があちこちで起きているらしい。

 父さんのところに誰も見たことがないような美女が現れ、あろうことか父さんをさんざん振り回して去っていった。シーザーさんとジョセフさんは、目の前で女の子をナンパしていた男が目障りだったので焼きを入れてやったら、それが東洋の国の王様だと分かり、生きた心地がしなかったと震えながら話してくれた。しばらく前にこの辺り一帯を襲った巨大な雷は、ピエロのような奇抜な服装の男の仕業だ、と仗助君が言っていた。彼が仗助君の髪型を笑い、ブチ切れた仗助君がお返しに彼の服装をけなしたら、仗助君の何倍もの剣幕でキレたのだという。シュトロハイムさんを分解しようとした科学者だと名乗る男には、人造人間の弟子がいるらしい。父さんの部下のラバーソールさんとオインゴさんは、同じように変身能力がある野郎に一杯食わされた、そいつの素顔がいい男だったのがなおさら気に食わない、と歯ぎしりして悔しがっていた。

 趙公明さんに聞いたら、どの人物にも心当たりがあるという。特に父さんの元に現れた美女は、付き合いの長い元同僚だそうだ。

 ほとんどみんなどこか共通点がある人物と出会っている。ひょっとしたら趙公明さんの話に出てきたチョコラータに似た人物も、どこかに現れているのではないだろうか。

 目の前の動物図鑑のページをめくる。心を落ち着かせたい時、夜の学校の図書館に来て読書をするのが僕の習慣だ。

 同じような環境に適応した動植物が、もともと何の類縁関係もないのに似てくるという現象がある。フクロネコ、フクロアリクイ、フクロモモンガなど、オーストラリアにいる有袋類の中に、他の大陸に生息する動物に似たものが多いのがいい例だ。平行世界の間でも、同じようなことが起こっているのかもしれない。

 趙公明さんたちの世界にはスタンド使いはいない。その代わり仙人や道士は特殊な武器を使う。あの巨大な雷を起こしたのもそれだという。

 僕たちのスタンドは彼らには見えない。しかし、仗助君が対峙した相手と同じように、凄まじい破壊力を広範囲に及ぼすようなスタンド使いは恐らくいない。スタンドが見えないのは確かに彼らにとって大きなハンデだが、戦ったらどちらが勝つか、簡単に決めることはできない。恐らくちょっとした偶然で勝負の結果は簡単にひっくり返る。それも、強くて栄華を極めた生き物があっさり絶滅し、弱い生き物がたまたま生き残って子孫を増やすということが頻繁に起きる、生き物たちの世界に似ているかもしれない。

 本を片付けて図書館を出ると、門の前に、見覚えのある痩せて背の高い人影が見えた。

「やあジョルノ君、迎えに来てしまったよ」

「過保護な親か何かですか」

「君の『兄さん』だからね」

「兄さんじゃあないでしょう。まあ、そういうことなら一緒に帰りましょう」

 僕たちが図書館と家のちょうど中間くらいの場所に差し掛かった時だった。不意に閃光弾のような眩しい光が辺りを包み、僕は思わず目を閉じた。

 後ろで微かにカチリという金属音が聞こえた。

「ジョルノ君、伏せて!」

 趙公明さんの声が響いた。目を開けると、鞭を構えてもと来た方へ飛ぶように走っていく彼の姿が光の中でかろうじて見えた。彼の鞭が勢い良くしなり、曲がり角の塀を粉々に打ち砕いた。ものすごい地響きがして、やがて光がふっと消えた。

 暗さに目が慣れ、僕が瓦礫の山と化した塀の方に向かったとき、趙公明さんは、遮光メガネをかけた男を瓦礫の中から引きずり出していた。

「死んではいないようだけど、生き埋めにした後でもう一度打っておいたからしばらくは動かないだろう。見たまえ。僕たちを撃つ気だったらしい」

 男の手には弾丸の込められた拳銃が握られていた。そういえば趙公明さんはミスタの拳銃を見たことがあった。

「この間から君と外出すると、どうも何者かに監視されているような、つけられているような気がしていたんだよ。いずれ襲撃してくるだろうと思っていたら、さっきの光、それに怪しい金属音……僕の読みが見事に当たったということだね」

「そういえばこの間、光を操ることができるスタンド使いの殺し屋の情報を聞きました。室内を急に暗くしたり、光学迷彩のように使ったりするらしいという話でしたが、なるほど、閃光弾代わりにも使えるのか……。どこが裏で糸を引いているのか調べないと。しかしよくとっさに動けましたね」

「僕をなめないでもらいたい。勝負の勘も腕も衰え知らずさ」

 返り血のついた鞭を手にし、白い歯を見せてニヤリと笑う姿は、獲物を仕留めた肉食獣を思わせる。そう、さながら太古の昔、サーベルタイガーが地球上で繁栄していた頃、サーベルタイガーがいなかった南米で彼らと対をなすように進化した「有袋類のサーベルタイガー」、ティラコスミルスのような。

「今回は趙公明さんのおかげで命拾いしました。でも、きっと第二、第三の刺客が送られてくるでしょう。油断はしないようにしないと」

「安心したまえ。君には僕という凄腕のナイトがついているのだからね」

「あまり自惚れない方がいいですよ。スタンド使いではない以上、スタンドの動きを見切ったり、本体ではなくスタンドに攻撃を加えたりできないんですから。今回も、もっと殺傷能力の高いスタンド使いが相手だったらどうなっていたことか」

「ジョルノ君はいつも手厳しいな」

「手厳しくもなりますよ。いつもすぐ調子に乗って、そのせいで大失敗して、なのにまるで懲りない父さんを見てきていますからね」

「でも僕が父上と同じとは限らないと思わないかい?」

 やれやれ、頭がいいんだか悪いんだか。本当におかしな人だ。


 今回のことを受けて、僕は今まで住んでいた家を出て、別の場所に避難することにした。

「あの男はどうするつもりだ?」

 父さんが聞いた。

「放り出しても行くところがない人なので、連れていきます。僕の命を救ったこともある人ですしね」

 僕が答えると、父さんは一言

「好きにしろ」

 と言った。

 僕たちは粛々と荷造りを進めた。趙公明さんもこっちに来てから買い込んだ服などを手際よく箱に詰めている。

「今まで移動のときはスーツケースを三つくらい持っていくのが普通だったから、ずいぶん荷物が少なく感じるよ」

「スーツケース三つですか? 無駄もいいところじゃあないですか」

「ノンノン、無駄なものか。君はいつもそうやって無駄だ無駄だと言うけれど、僕にとってはちゃんと理由が……」

「はいはい」

 ふと、しばらく前に、ダービー兄弟の兄、ダニエルさんに愚痴をこぼしたのを思い出した。

「みんな彼を『ジョルノの兄さん』と呼びますが、考え方も趣味も合わないし、うるさいし、非常識で迷惑だし……彼が来てからもう何度喧嘩になったか分かりません。あんな人が本当に兄さんだったらたまりませんよ」

 ダニエルさんは小さく首を振った。

「ジョルノ様、何度も喧嘩ができるということはちゃんとお互いの言いたいことが言える関係だということです。そしてジョルノ様はあの方の暮らしに気を配っていらっしゃるし、あの方もジョルノ様を身内のように思っておられるように見受けられます。趣味が合わなくても、性格が違っても、お互いを気にかけることができるなら、十分に仲のいいご兄弟ではありませんか。あやかりたいものです」

 そう言って少し悲しい顔をした。

 十分に仲のいい兄弟、か。いつか彼は元の世界に帰ってしまうだろうから、その時までの期間限定だけれども。

「さて、一通り荷物を詰め終わったし、ナイトキャップにいつものレミーマルタンでも少しいただこうか」

 趙公明さんが荷物に封をして立ち上がった。僕は食器棚を開け、二人分のグラスを取り出した。

「僕も付き合いますよ、『兄さん』。本当は未成年だし、あまり飲めませんけどね」



Pixivより転載。
実はどっちも子安さんが演じたDIO様と趙公明。髪や眉毛の色も似ているし、結構共通点がある気がします。
前作を書いた時「似てる二人は喧嘩する」が通奏低音になっているな、と考えていたら「収斂進化(本文にも出てきた、類縁関係のない動植物が進化の過程でたまたま似た姿形になる現象)」というワードが頭に浮かびました。趙公明もまさか自分が有袋類だと思われているとは思うまい。
ちなみに「有袋類でないサーベルタイガー」スミロドンは「天然のアスファルトの沼にはまって動けなくなった動物を襲おうとして自分もアスファルトにはまって死んだ」と思われる化石が大量に見つかっているらしく、そんなツメの甘さがDIO様によく似てゲフンゲフン。ドブに落ちるシベリアンハスキー(『動物のお医者さん』の)か。

……新しい封神演義のアニメでも子安さんが趙公明をやらないかな。でもそもそも趙公明の出番があるかどうかも怪しいし、あのアニメのスタッフが昔のアニメやゲームで好評だったキャストをまた起用するような粋な計らいをするとは思えゲフンゲフン。
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No title

全く違和感を感じないのがふごいです。
そしてスミロドンェ…(じわりながら)

Re: No title

コメントありがとうございます。
クロスオーバーなので世界観をうまく繋げるのが難しいのですが、違和感なく読んで頂けたならとても嬉しいです!

ちなみにティラコスミルスとスミロドンは
北米のスミロドン、南米に進出

有袋類は繁殖システムの都合上脳が発達しにくいので、ティラコスミルス、より知能の高いスミロドンとの競争に負け絶滅

スミロドンはパワーはあったが鈍臭かったので、俊敏でおそらく知能も優っていた新しいタイプのネコ科動物(ジャガーとかピューマとか)に駆逐され、絶滅
と、どっちも絶滅の経緯が残念だったりします。
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パクチー

Author:パクチー
関東から奈良県に引っ越しました。
旅と動物とウンまぁぁ~い物を愛する既婚女性。

ツイッターはこちら。https://twitter.com/ricecooker1229

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